それって素直?わがまま?
障がいのある子の「素直?」「わがまま?」ということをテーマに、思うことをまとめてみました。
素直?わがまま?なんとなく感じた違和感
「素直」って「わがまま」ってどういうことなんだろう?
そんなことを考えるきっかけをくれたのは、初めて特別支援学校で働いたときに、先輩の先生が言っていた言葉。
「この子たちは人の手を借りて生きてくんだから、素直に育たないといけない。」
この言葉を聞いたとき、なんとなく感じた違和感。
言ってることはわかるけど、、なんかしっくりこない。。
この先生のクラスには、タオルをトイレに詰めて楽しんでいる子がいた。
その子の話をしながら出てきたこの言葉。
その先生とは違うクラスだったので、自分のクラスで考えてみた。
自傷や他害、パニック等がある、かわいらしい女の子。
思い通りにいかなかったり、イメージしていたことと違うことが起こったりすると、人を叩いたり暴れたりする。
その子のことを考えると、見方によっては”わがまま”?と思うこともある。
でも、もしこの子に障がいがなかったら、”ちょっとわがままなかわいい子”として、むしろクラスの中心にいるような女の子なんじゃないかなぁと。
むしろ”わがままさがかわいい”と言ってもらえるんじゃないかなぁと。
でも、障がいがあるとその”わがまま”さは、かわいいと思ってもらえない。
障がいがなければ、多少性格が悪くてもわがままでも、当たり前に生きていけるのに、障がいがある子は”素直”を目指さないといけないのはどうしてなんだろう…。
障害のある人は心がきれい?
少し話は変わりますが、「障がいのある人は心がきれい、純粋」と表現されることがよくあります。
個人的には、この言葉にも少し違和感。
障がいがあろうとなかろうと、その人はその人。
障がいと心のきれいさは関係ないと思う。
施設で働いていたときに、大人になったたくさんの成人男性と2年間一緒に過ごして思ったこと
・好きな人の前で態度が変わる
・嫌いな人の前で態度が変わる
・やりたくないことは拒否する
・職員の思い通りにはならない
・あたりまえに性欲がある
、、、、、、、、、、
他にもたくさんあるけど、どれも一人の人として当たり前のことで、
「障がいのある人たちって心がきれいだなぁ」と感じたことはほとんどない。
障がいがあってもなくても、一人の人間としていろんな感情や欲がある。
でも、そこに一人一人の人間らしさがあって、それがそれぞれの魅力なんじゃないかなぁと。
人の手を借りる?
「この子たちは人の手を借りて生きてくんだから、素直に育たないといけない。」
この言葉に感じたもう一つの違和感は、「人の手を借りて生きていく」ということ。
この先生が言おうとしたこともわかる。
でも、「人の手を借りて生きていく」というのは、誰もが同じ。
見える形でも、見えない形でも、いろんな人が支えてくれていて、自分がいる。
人の手を借りずに生きている人はいない。
むしろ、たくさんの人の手を借りて、頼れる人がたくさんいる方が、豊かな人生なのかなって思う。
障がいのある人が「人の手を借りる」ことは、障がいのない人が「してあげる」というニュアンスがあるのではないかと思う。
できないこと、苦手なことを補い合うのは当たり前のこと。
障がいがあることによって、いろんな制限やうまくできないことがある。
「してあげる」気持ちでいると、思うような反応じゃなくて腹がたつこともあるかもしれない。
でも、思い通りにできなくて一番しんどいのは本人。
本人の意思を尊重することは当たり前のこと。
「人の手を借りる」ことが、「してあげる」ではなく、当事者の「意思決定」として当たり前になったらと思う。
違和感の正体
「この子たちは人の手を借りて生きてくんだから、素直に育たないといけない。」
違和感を感じたのは、ここで使われている”素直”という言葉が、大人の思い通りに動くこと、大人を困らせないこと、として使われていたような気がしたから。
”素直な人”と聞くと、なんとなく良いイメージをもつし、子どもも大人も素直であってほしいとわたしも思う。
でも、その素直は、”従順である素直”ではなく、”ありのままの素直”であってほしいと思う。
時には、わがままな言動も含めてその人らしさ。
”素直”と”わがまま”、いろんな考え方があるけど、”わがまま”な部分も含めて”素直”であってほしい。
それがその人の人間らしさであり、魅力だと思う。
”素直”に、自分の意思を大切に育ってほしい。