「物の永続性の理解」について考えよう
今日は、「物の永続性の理解」ってなに?ということをテーマに考えていきたいと思います。
物の永続性の理解って?
「物の永続性の理解」とは、”物がそこに見えなくても、そこにあることがわかる”ということです。
日常生活の中で考えると、「子どもが何か好きなおもちゃで遊んでいるときに、上に布をかけておもちゃを見えなくしたとときに、隠されたものを覚えていて布を払いのけてそのおもちゃで再び遊ぼうとするようになる」といった様子です。
(物の永続性の理解が不十分な場合は、布で覆われれるとそこにあることがわからなくなり、おもちゃへの関心がなくなってしまいます。)
教材を例に考えると、上の写真で紹介しているプットイン課題(物の永続性の理解)があります。
この教材は、ケースのふたが簡単にあくようになっています。
デコレーションボールを入れた後ふたをあけて、入れたものがそこにあることを確認することで、”見えなくなってもそこに物があること”を確認していきます。
どんな力につながるの?
続いて、「物の永続性の理解」はどんな力につながっていくのか、考えていきたいと思います。
「物の永続性の理解」は、”記憶の力”の最初の段階です。
隠されてもそこにあったということを記憶できるようになったからこそ、”見えなくなってもそこにある”ということがわかるようになります。
”見えなくなってもそこにある”ということがわかるようになると、上の写真のような「二種位置記憶課題」という課題に発展していきます。
「二種位置記憶課題」は、用意した二つの器の片方に、子どもに見せながらおもちゃ等を入れ、ふたをした後、おもちゃの入っている方を選択してもらう課題です。
この課題ができるようになることは、二つの器の片方に入れたおもちゃを記憶し、取り出す位置記憶の学習が成立したということになります。
つまり、器のどちらにおもちゃが入っているかを記憶し、それを取り出すという、手段の連鎖(見るー覚えるー取る)ができるようになったこと、そして目の前のものにすぐ手を伸ばすのではなく、手を出さず一瞬待つという力がついたことを意味します。
器に入れてから選択するまでの時間を徐々に長くしていくことで、記憶を保持する時間を長くしていくことにつなげていきます。
こういった力がつくと、あそびや生活場面においても、以前に経験した簡単な出来事を覚えていて反応することがみられるようになってきます。
例えば、お母さんがテーブルを出すと、まもなくおやつがもらえることが予測できて喜んだり、犬を見ると以前吠えられたことを想い出して泣き出したりする、といった様子です。
記憶する力がつくことで、簡単な予測行動が芽生えてくるようになっていきます。
記憶の力がさらに高まっていくと?
記憶の力が高まっていくと、次のような課題にもつながっていきます。
【弁別課題】
記憶の力が高まると、「同じ」を見分ける弁別課題へとつながっていきます
弁別課題は、選択肢の形を記憶する、提示されている形を記憶する、そしてそれらを覚えておいて比べて「同じ形を選ぶ」という課題です。
弁別課題は、記憶の力が基礎となり、できるようになっていく課題です。
【付加欠損課題】
これは、(イラストの)足りないところはどこ?を考える、「付加欠損課題」という課題です。
(椅子の脚がない…、はさみの持つ部分がない…、メガネの柄がない…、ブランコのひもながい…)
頭の中で物や文字をイメージできるためには、頭の中に見たものを記憶し保持できる力が必要です。
記憶の力が発達し、言葉を習得するようになると、頭の中でのもののイメージがしかっりしてきます。
「付加欠損課題」は、頭の中でそのものをイメージできる(記憶の力が発達する)から、足りないところを考えられるようになる課題になります。
まとめ
今日は、「物の永続性の理解」とは?というテーマで考えていきました。
”物がそこに見えなくても、そこにあることがわかる”ということは、当たり前のようで当たり前のことではありません。
”記憶”の学習を丁寧に取り組んでいくことで、「覚える」「見比べる」「イメージする」といった様々な力につながっていきます。
今取り組んでいる課題が、どんな力につながっていくのか考えながら取り組むことで、子どもたちの世界も、より広がっていくのではないかと思います😊
参考書籍
〇宇佐川浩(2007)感覚と運動の高次化からみた子ども理解 学苑社
〇川間弘子(2022)発達に遅れがある子どものための文字・文章の読み書き指導 ジアース教育新社
〇池畑美恵子(2020)感覚と運動の高次化理論からみた発達支援の展開