文字の学習「一文字で意味のあるひらがなってなに?」
今日は文字の学習の導入して、「一文字で意味のあるひらがなって何?」というテーマで考えていきたいと思います。
教材(単語構成板)について
【写真1】で紹介している”単語構成板”という教材は、どのような時に使うのでしょうか?
この教材は「文字の学習」をする時に使用するものです。
”単語構成”という名前の通り、だんだん文字数を増やしていき、”い”と”す”という文字が組み合わされて”いす”という言葉になるということを学んでいきます。
文字がわかるというのは、「文字が読めるだけでなく、文字が組み合わされて意味のある言葉(単語)を表していることがわかる」ということだと思っています。
つまり、”あ”を見て「あ」と読めるだけでなく、例えば「”あ”と”し”が組み合わされて”あし”という単語になり、”あ”は、”あし”の”あ”であることがわかる」ということになります。
文字の学習は何から始める?
文字の学習を行うとき、どのような字から始めるでしょうか?
よく見られる学習方法として
1.一文字ずつ学習する
(”あ”から順番に学習する、名前に含まれている文字から学習する、字形が簡単な文字(し、へ…等)から学習する)
2.単語のかたまりで学習する
(自分の名前、好きなキャラクターの名前、身近な物の名前等から学習する)
この二つがあるのではないかと思います。
具体的に考えていきたいと思います。
1.一文字ずつ学習する
この方法で、文字を習得できる子もいます。
しかし中にはこんな悩みを抱える子もいます。
「ひらがな50音は読めるけど、文字を使って(単語や言葉を)表現することはできない」
このような悩みを抱える場合、文字が記号の認識で止まっており、意味の表す言葉として使えるものと理解できていない可能性が考えられます。
英語を例にすると、ローマ字は読めるけど、”APPLE”を”A”、”P”、”P”、”L”、”E”としてしか捉えられなければ、文字を読んでも、アップル(りんご)をイメージすることはできません。
2.単語のかたまりで学習する
この学習方法で取り組んでいるときには、こんな悩みを抱える場合があります。
「”りんご”と🍎(りんごのイラスト)のマッチングはできるけど、”り”、”ん”、”ご”というひらがなをバラバラに提示すると読めない。又は”り”という文字だけを見た時も「りんご」と答えてしまう」
これは”りんご”というまとまった言葉を、🍎と認識しており、”りんご”が、”り”と”ん”と”ご”という3つのひらがなから構成されていることを理解できていない、という可能性が考えられます。
また「名前書いてというと名前は書けるけど、名前に含まれる文字だけ書くことはできない」という悩みも同様に考えられます。
名前=「〇△□☆」ということはわかっていても、〇△□☆が一文字ずつのひらがなであることがわかっていないという可能性があります。
このような例から、文字の学習では
〇一文字ずつ読むことができること
〇それらの文字を組み合わせて意味のある言葉(単語)になること
を理解できることが大切になります。
そして、そのためには”一文字で意味のあるひらがな”から学習を始め、文字に意味があることを学習する、ことから始めていきます。
※1.2.のような学習方法で文字を習得できる子もいるので、そういった場合はその方法を続けていくのも良いと思います☺
一文字で意味がある言葉
では、具体的に、一文字で意味のあるひらがなとは、どのようなものがあるでしょうか?
い=胃
え=絵
お=尾
か=蚊
き=木
け=毛
こ=子
す=酢
ち=血
て=手
と=戸
に=二(2)
ね=根
は=葉、歯
ひ=火、日
へ=屁
め=目、芽
や=矢
このように、意外とたくさんあります😊(もっとあるかもしれません💦)
では、この中でどのひらがなから始めるのがいいのでしょうか?
最後に紹介する参考書籍の中では、”て”、”め”、”は”を勧めています。
その理由は、子どもにとってわかりやすい(よく見かけるもの、触れるもの、見て名前がわかるもの、そしてその名前を言われてほとんどの人が同じものをイメージできるもの)からです。
例えば、「木」は多様な種類があります。人によってイメージする「木」が違う可能性もあります。
「絵」では、描いてある絵の内容によっては、絵の内容を答えてしまう場合もあります。
「尾」はしっぽ、「火」はほのお、と答えることもあります。
「胃」は見えないのでイメージがしにくいです。
…と同じ一文字で意味のあるひらがなでも、子どもにとってもわかりやすさには大きく差が出ます。
そう考えた時に、身近で普遍的で一文字のものは、身体の一部である”て”、”め”、”は”がいいのではないかと考えられます。
そして、書字の観点から、その中でも、”て”がわかりやすいと考えます。
まとめ
今日は、文字の学習の時に「一文字で意味のあるひらがなから学習する理由」について考えていきました。
文字がわかるというのは、
”文字が読めると同時に、文字が組み合わさって意味のある言葉(単語)になることがわかる”ということです。
文字がわかるようになると、自分の想いや考えを伝えるコミュニケーションの力につながっていきます。
スタートは一文字からでも、その理解が必ず伝える力につながっていきます。
今回写真で紹介した、単語構成板を使った具体的な指導方法は、下記の参考書籍の中で紹介されています。
ぜひ読んでみてください😊
参考書籍
〇川間弘子(2022)発達に遅れがある子どものための文字・文章の読み書き指導 ジアース教育新社
〇宮城武久(2016)障害がある子どもの文字を読む基礎学習 学研プラス