「分割パズル」の目的は?

「分割パズル」ってどんな課題?その目的は?というテーマで考えていきます。

「分割パズル」ってなに?

“パズル”と聞いてイメージするのは、↓イラストのような凹凸の形を合わせるパズルではないかと思います。

そして今回解説する分割パズルは、↓写真のように、切片が直線のパズルのことです。

この二つのパズルの大きな違いは、切片(パズルが合わさる部分)の形です。

パズルというと、当たり前に絵を合わせて完成させると思いがちですが、自閉傾向がある場合やその特性によっては、”パズルの切片の形”に注目してパズルを完成させているということもあります。
そういった子たちは、白い絵のないジグソーパズルを、難なく完成させることができます。

今回紹介する分割パズルは、そういった切片の形に注目してパズルを完成させるのではなく
”描いてある絵”に注目をして、絵を合わせることが目的です。

切片の形をまっすぐにして、ピースの大きさを同じにすることで、”パズルの絵”に注目することを促しています

分割パズルに必要な力

分割パズルは”絵を合わせる”ことを目的としたパズルです。

具体的にはどのような力が必要になるでしょうか。

以下の二つの力について考えていきます。

〇絵の全体像を想像する力

〇絵の細部に注目して絵を合わせる力(細部視知覚)

まずは、”絵の全体像を想像する力”について考えます。

パズルの絵を完成させるためには、分割されたパズルの一部分から、「どんな絵になるだろう?」と想像する力が必要になります。

例えば動物の絵を作る場合は、顔はこっち側、しっぽは反対側と考えることで、だいたいの位置関係を想像することができます。

パズルの一部にタイヤのイラストを見つければ、「車になるかな?」「自転車かな?」
そんな風に部分から全体を想像する力があることで、絵を完成させやすくなります。

これが、”絵の全体像を想像する力”です。

続いて、”絵の細部に注目して絵を合わせる力”について考えていきます。

全体を想像するだけで簡単に完成できることもありますが、知らない絵だったり細かい絵だったりする場合には、細部に注目して、「こことここが合わさるかも」と考える力が必要になります。

この絵の細かい部分を見分ける力を、細部視知覚といいます。

分割パズルは、この細部視知覚を高めていく効果もあります。

例えば、↑上の写真のようなイラストの場合を考えてみます。

左の写真のように、口の部分に注目して「口の線の部分をあわせよう」と考えたり、右の写真のように、自転車の持ち手の部分に注目して「自転車の持ち手はどこにあるかな?」と考えたりするのが、細部視知覚になります。

人によって注目する箇所は違うと思いますが、絵の細かい部分に注目して、認識する力が必要になります。

このように、分割パズルでは、”絵の細部に注目して絵を合わせる力”も大切になります。

切片の向きによる難易度の違い

二分割のパズルを考えるとき、上の2種類の分け方(真ん中で半分にする、対角線に半分にする)では、どちらが難易度が高いでしょうか?

一般的には、右のような対角線に半分にする方が難易度が高くなります。

自分に対して真っすぐにひかれた線は正中線と同じでわかりやすいですが、対角線に斜めになった線は、斜めの線の認識が難しい場合にははわかりにくい線になります。
そのため、絵の合わせ方自体がわからなくなり、下の図のように線が自分に対して真っすぐになるように回転させて、取り組む様子が見られることもあります。

子どもの実態に応じてどのようにパズルを分割させるのかを考えて提供し、斜めの線の理解が難しい場合には、真ん中で半分に分けたものから取り組んでいくのが良いと思います。

あえて斜めの分割パズルに取り組むときには、枠等を作って、予め片方のパズルは入れておくなど、斜めの線を意識しながら取り組めるような工夫をすることで、できるようになっていくこともあります☺

分割パズルの紹介

これまで作った分割パズルをいくつか紹介します。

↑こちらは、まるく作った分割パズルです。
四角い背景だと、分割数を増やすと、絵の空白部分が増えてしまうこともありますが、パズル全体をまるくすることでヒントになる絵の部分が残りやすくなります

また、線が斜めになることで難易度が上がるので、直線で分割されたパズルより、少し難しくなります。

※この”まるい分割パズル”は、教材販売サイトで教材作成用のデータを販売しています。
(著作権の関係で、イラストは写真のものとは違います。)

↑こちらは、ダイソーの木材のサイズにあわせて作った、二分割パズル、四分割パズルです。

木材にイラストを貼り付けて使っています。

この教材のポイントは、木材分の厚みができることでパズルの操作がしやすくなることです。

また枠を作ることで、木材がはまる感じがあり、「できた」という達成感を感じやすくなります

始めは、一つの木材を合わせるところから始め、徐々に数を増やして取り組んでいくと良いと思います。

この教材は木材のサイズに合わせて作っていますが、作ったパズルの大きさにカラーボード等で厚みをつけるのも良いと思います。

操作のしやすさは、教材の大事なポイントでもあります。

ちょっとした工夫で「できる」「できない」が変わってくるので、いろいろアレンジしてみてください😊

↑最後に紹介するのは、六面パズルです。

四分割パズルの一種ですが、立方体の六面全てにイラストが貼ってあり、6種類のイラストを作ることができます。

「このイラストではどの面を使うのか」ということを考えないといけなくなるため、難易度が上がります。

写真はイラストで作った教材になりますが、〇や□等の記号から始めると、特徴をつかみやすいと思います☺
(人によってはイラストの方がわかりやすい場合もあります。)

まとめ

今回は、「分割パズル」ってどんな課題?その目的は?というテーマで考えてきました。

分割パズルは”絵を完成させる”ことが目的のパズルで、

〇絵の全体像を想像する力

〇絵の細部に注目して絵を合わせる力(細部視知覚)

の二つの力が必要になります。

少ない分割数から始め、少しずつ分割数を増やしていくことで、難易度がどんどんあがっていきます。

その子にとって興味のある絵で取り組むことも大切です。

図形では四分割のパズルができなくても、好きな絵では九分割のパズルができるような子もいます。

子どもが楽しみながら取り組めること、その中で二つの力を伸ばしていけるよう取り組んでいくと良いと思います☺

参考書籍

〇宇佐川浩(2007)感覚と運動の高次化からみた子ども理解 学苑社

〇立松英子(2011)発達支援と教材教具Ⅱ ジアース教育新社

〇立松英子(2015)Ⅲ発達支援と教材教具Ⅲ ジアース教育新社

〇高橋浩,藤川良純,西端律子,太田和志,鴨谷真知子(2017)誰でも使える教材ボックス 学苑社

※分割パズルのイラストの一部は、発達支援工房めだかで購入したデータを使用しています。

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