図と地の弁別ってどんな課題?

「図と地の弁別」ってどんな課題?というテーマで考えていきます。

図と地ってなに?

って?ってなに??

心理学では
「ある物が他の物を背景として全体の中から浮き上がって明瞭に知覚されるとき、前者をと言い、背景に退くものをという」
といわれています。

上の図形を見たことがあるでしょうか?

有名な「ルビンの壺」という図形です。

黒い方に注目すると、壺のイラストが浮かび上がり(図)白い方(地)は背景となる。

白い方に注目すると、向かい合った人の顔のイラストが浮かび上がり(図)黒い方(地)は背景となる。

この「ルビンの壺」は、”図”と”地”が、反転する(見方によって変わる)反転図形です。

図と地の弁別?

では、「図と地の弁別」という課題について考えてみます。

「図と地の弁別」とは、背景となるさまざまな刺激(地)から、大切な情報(図)を見つけ出す課題のこと。

例えば、写真のようななぐり書きで書かれたの線の中から(地)、探している形〇(図)を見つけ出す課題です。

背景に惑わされずに、探している形に注目する力が必要です。

聴覚的な視点で「図と地の弁別」を考えると、

「色々な音が聞こえる中で(地)、特定の人の声(図)を聞くことができる。」

ということも聴覚的な「図と地の弁別」になります。

視覚的な視点でも、聴覚的な視点でも、他の刺激がある中で、必要な情報に注目できる力が試されるのが「図と地の弁別」という課題になります。

図と地の弁別が難しいと日常生活でどうなる?

「図と地の弁別」に課題がなければ、背景となるさまざまな刺激(地)の中から、大切な情報(図)をとりだして理解することができます。

でも、課題がある子にとっては、周囲の他の刺激(地)に振られて色々なことが困難になってしまいます

教科書や黒板のどこに注目したらいいのか(図)、わからない。

授業中に、他の視覚刺激(地)が入ってくることによって、必要な情報(図)がわからなくなって、他の刺激につられて席を立ってしまう。

図形やイラストのどこに注目したらいいのかわからない。(図と地の判断が難しい)

道路等を歩いているときに看板(図)に気付かない。

たくさんの人が集まると、先生の指示(図)を聞き取ることが難しい。

グループワーク等色々な人の声が聞こえると(地)、誰の声を聞いたらいいのかわからなくて話についていけない。

こういった場面はよくありますが、その背景に「図と地の弁別」に課題がある可能性があります

(例に挙げたような状況のすべての原因が、「図と地の弁別」に課題があるというわけではありません。可能性の一つとして考えてみてください。)

「図と地の弁別」に関する教材紹介

「図と地の弁別」に関する教材をいくつか紹介します☺

左の写真は、たくさんの〇の中から(地)、△(図)を見つける課題です。

写真では三角を上に重ねていくようにしていますが、なぞったり、プリント課題として提供するのも良いと思います。

〇を増やしたり重ねたり、△の線を〇と同じにしたりすることで、難易度を調整することができます。

右の写真は、なぐり書きの線の中から(地)、提示された動物(図)がどこにいるか探す課題です。

好きな絵やキャラクターがある子にとっては、「〇〇はどこにいる?」等、動機づけしやすくなります😊

聴覚的な課題としては、楽器あてクイズを紹介します。

本人に見えないところで、楽器の音をならし、どの楽器だったのか選んでもらう課題です。

意図的に音に注目する機会を作ることで(図)、「聴こうとする力」を高めていくことがねらいです。

まとめ

今回は、「図と地の弁別」という課題をテーマに考えていきました。

背景がいつもちかちか光っていたり、きーっと嫌な音が鳴っていたりする環境では、多くの人が見ることや聴くことに注目することが難しくなると思います。

「図と地の弁別」が難しい子にとっては、他の刺激が気になったり、必要な情報がわからなかったりすることで、本人自身が困っていることも多くあります。

意図的に「必要な情報に注目しようとする」ことを練習していくことで、少しずつ日常生活での困難さが減っていくこともあります。

周辺の刺激を減らしたり、必要な情報をわかりやすく強調したりすることで、「図と地」がわかりやすくなることもあります。

本人の見る力、聴く力を高めていくとともに、注目しやすくなるような環境調整もあわせて大切な支援になります😊

参考書籍

〇宇佐川浩(2007)感覚と運動の高次化からみた子ども理解 学苑社

〇宇佐川浩(2007)感覚と運動の高次化による発達臨床の実際 学苑社

〇高橋浩,藤川良純,西端律子,太田和志,鴨谷真知子(2017)誰でも使える教材ボックス 学苑社

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