子どもの視線を大事にする

「子どもの視線を大事にする」
今日は、このことをテーマに考えていきたいと思います。

「子どもの視線を大事にする」
この言葉だけ聞くと、普通のことじゃないかな?とも思いますが
子どもへの指導方法を学ぶ研修に参加したときに何度も声を掛けられ、「あれ、わたし全然子どもの視線を見てなかった…」と気付かされた言葉です。

主に、1対1での個別学習の時の「子どもの視線を大事にする」ことについて、考えていきます。

座る位置を考える

子どもの視線を大事にするをためには、子どものどこに座るのが良いでしょうか?

【図1】

【図1】のように子どもと向かい合うことで、子どもの目を確認することができます。
また、立ったままでは子どもの視線が確認しづらいので、大人も椅子に座って指導を行うことが大切になります。

ただ、学校での指導の場合は、人数や指導内容の関係で、このような対面での指導が難しいことも多いと思います。
また、指導内容によっては、【図2】のように、横から・後ろから見守る方が取り組みやすくなる課題もあります。(プリントの計算問題を一人で解く、文章題を読む、見られるのが苦手…等)

【図2】

なので、この課題だけは必ず対面で行うということをイメージして、クラス全体の課題の内容や順番、提供方法を設定すると良いと思います。
例えば、Aくんとこの課題を1対1でやりたいから、その間Bさんは一人でできるプリント課題、Cさんは安心して取り組める作業課題、Dくんには一好きな本を読んでいてもらう…等、クラス全体の課題の提供の仕方を考えていきます。

複数人に対して課題を設定すると、思い通りに進まなかったり、予定していた課題ができないこともあると思います。
だからこそ、この課題だけは必ず1対1で取り組むという優先順位をつけておくと、取り組みやすくなっていきます。

視線を考える

子どもと個別の1対1の学習を行うとき、提供する大人はどこに視線を向けているのでしょうか?
「子どもの目を見ている気もするけど…」「手元かな?」「提供した課題…?」
ふと振り返ってみると、思い出せない人も多いのではないかと思います。

でも、指導の最中に誰かに「今どこ見てる?」と聞かれると、
子どもの手元”を又は教材を提供する”自分の手元”を見ていることが多いような気がします。
(私自身がそうでした…)
子どもが提供した課題ができているのか気になるため、自分が教材をうまく操作できているのか確認するため、ついつい手元を見てしまいがちです。

でも、その指導の最中こそ「子どもの視線を大事にする」ということが、とても大切になります。

では、指導中の子どもの視線はどこにあるのでしょうか…?

例えば〇と△の形を見分ける弁別課題(型はめ)に取り組むとき、子どもの視線は
①入れる形(〇)を確認する
②入れる場所を確認する(同じ形をみつける)
という視線の動きが必要になります。【図3】

【図3】

この時、子どもの視線が①→②となっていることが確認できているでしょうか?

この課題に子どもが取り組むとき、①に視線を向けて〇の形をとって、②に視線を移さなくても同じ形にはめることがあります。
なんとなく手に取り、がちゃがちゃと操作してみたら型に入った!という感じです。(たまたま手を伸ばした先が答えで入ることもあります。)

この時、子どもが操作する手元に注目していると、視線は確認できていなくても、〇の形に入ったらできた、ということになります。

でもこの弁別課題の目的は、〇のところに〇が入ったではなく、〇と△の形の違いを見分けて〇を入れることができるです。
見分けることができていたのかは、子どもの視線を確認していないとわかりません
子どもの視線を見ていなかったら、課題の目的が達成されたかわからないことになります。

課題の目的が達成されたかわからないということは、なんのためにこの課題に取り組んでいるのかわからない…ということになります。
1対1の指導を行うときには、〇〇を教えるという目的が必ずあると思います。
その目的が達成できたか確認するためにも、「子どもの視線を大事にする」ということは意識して取り組んでいきたいと考えています。

例で紹介した、〇と△の弁別課題の細かい指導手順に関しては、宮城武久先生の本に書かれていますので、興味のある方はそちらも読んでみてください。(今回は視線の大切さの例として、少し省略した形で紹介しています。)

以前参加した宮城先生の研修中で、宮城先生は、”見る”ことを教えることの大切さについて繰り返し話をしてくださいました。

障がいのある子の中には、”見る”ということがどういうことかわかっていない場合がある。だからこそ、”見る”ということを教えていくことが大切。大人が「見て」と声を掛けて子どもがそこに視線を向けた時、「そうだね。(見たね)」と声を掛けて見たことを肯定していくことで、”見る”ことをがどういうことかを教えていく

例えば麻痺があって思うように手を動かせなくても、見ることができていたら、理解していることがわかる。〇のところに〇を入れられなくても、〇と△の違いがわかることがわかれば、課題を次のステップにしていく

と言われていたことがとても印象に残っています。
”見る”ことを大切にしないといけないと、いつも思い出させてくれます。

まとめ

「子どもの視線を大事にする」ということを意識して実際に指導をすると、難しい…と感じることがよくあります。

ついつい課題ができるか気になって子どもの手元を見てしまう、、
教材を出す自分の手元を見てしまう、、

子どもの視線を見ながら指導をするということは、自分の手元を見ずに教材を操作できるようになるということでもあります。
そのためには事前に指導をイメージしておくことや、練習しておくことも大切になります。

子どもの視線を大事にしていると新たな気付きもあります。

なぜこの教材を見てくれないんだろう?

どうしたら視線を向けてくれるんだろう?

ということです。

この二つのことを考えると教材の工夫にもつながっていきます。

課題の設定が簡単すぎた?難しすぎた?
音がすれば見てくれるかな?動くと気付くかな?
好きなキャラクターなら見てくれるかな?
見える範囲を調整するといいのかな?
この教材に嫌な思い出があるのかな?
この課題の後なら集中して取り組んでくれるかな?
・・・・・・・・・・・・・・

色々な理由が考えられると思います。

この理由を考えることが、子どもの理解につながり、教材の工夫につながっていくと思います

「子どもの視線を大事にすること」
これからも大切にしていきたいと思います。

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