「教材を横に広げる」ってどういうこと?

教材を横に広げる…?

「教材を横に広げる」

教材を作るとき、提供するときに大切にしている考え方の一つです。
今日は「教材を横に広げるってどういうこと?」について、考えていきたいと思います。

「教材を横に広げる」
これは、”感覚と運動の高次化理論”についての研修に参加した時に聞いた言葉です。
そしてその研修で先生がおっしゃっていた
「教材を横に広げていく、それが結果的に次の段階への成長につながっていく。」
という言葉がとても印象に残っています。
自分なりに「教材を横に広げる」ということを意識して実践をしながら、本当にそうだな~と実感しています。

解釈の仕方は色々あるかと思いますが、「教材を横に広げる」ことについて、以下の二つの視点で考えていきたいと思います。

1.同じような課題設定ができる、別の教材を使う。
2.同じ教材を使って、提供や提示の方法を変える。

1.同じような課題設定ができる、別の教材を使う

ある一つの教材で目標が達成されたとき、この課題はクリアした!と思って
同じ教材を使って、次の目標を設定をすることはよくあることだと思います。

例えば数の学習で、ある一つの教材で”3”がわかったとき、次の目標はこの教材で”5”がわかる、になるかもしれません。
【写真1】のような課題を提供して、3までの数で正解できるようになったとき、次は5までの数で正解できることを目標に設定する、といったイメージです。
でも3→5までの数の理解は、実はすごくハードルが高く、この教材を繰り返すだけではなかなか目標が達成できないこともあります。

では、どのように目標を設定したらよいのでしょうか?

「教材を横に広げる」という発想で考えると、この教材で3まで理解できた時、
他の教材でも3まで理解できるのかな?ということになります。

表にまとめると、【図1】のようになります。

【図1】

【図1】の赤い矢印が、「教材を横に広げる」イメージです。

「一つの課題で3がわかった。じゃあ次は別の課題でも3が理解できるかやってみよう!」
これが教材を横に広げるときの考え方で、【写真2】のようにまた別の課題に広げていくことになります。

このように色々な形で3の理解を深めていくことで、結果的にいつのまにか5もわかるようになっている、
3→5を訓練的に習得するのではなく、3の理解を横に広げていくことで、結果的に5がわかるという縦への成長につながっていく。

「教材を横に広げていく、それが結果的に次の段階への成長につながっていく」ということです。

【図1】で考えると、青い矢印方向への成長を一気に目指すのではなく、赤い矢印のように横に広げていくことが、結果的に青い矢印方向への成長にもつながっていく、ということになります。

きょうざいのきのInstagramでは、似たような教材を紹介していることもありますが、これは教材を横に広げるという視点を持って、教材を提供できるようになったらと思っているからです。

2.同じ教材を使って、提供や提示の方法を変える

続いてもう一つの視点、「同じ教材を使って、提供や提示の方法を変える」ことについて考えていきたいと思います。

今度は、ボールのプットイン課題を例に考えてみようと思います。
プットイン課題は「できたらおわり」になりがちですが、工夫次第で色々な形で教材を広げていくことができます。

【図2】を見てください。

【図2】

縦(青矢印)の目標はボールの大きさに注目し、だんだん小さいものでもできるようにと目標を設定したものです。

横(赤矢印)方向の広がりについて
①ボールを変える
②箱を変える
③提示の仕方を変える
とう3つの視点で考えていきたいと思います。

①ボールを変える

①について、縦の目標設定の場合は、入れる物(ボール)を小さくしていく、ということでもいいかもしれません。
横に広げる視点で考えると、例えば、同じくらいの大きさの違う素材の物に変えてみる、ということが考えられます。
より固いもの、やわらかいもの、ふわふわ、ざらざら…同じ大きさでも色々な素材があると思うので、素材という点に着目して、広げていくことができます。

②箱を変える

②について、これは、ボールを入れる入口の大きさや、入れるところのわかりやすさ(穴が開いている、色が違う、素材が違う等)を変えることが考えられます。
また、【写真2】では中が見えるようにしたボックスを使っていますが、見えないとどうなるのかという点に着目しても良いかもしれません。
箱ではなく筒のようなものに変えてみる、キャラクターのイラストをつけてみる等、色々な工夫ができると思います。

③提示の仕方を変える

例えばボールの提示の仕方に着目すると、ボールを一つずつ手渡すのか、あらかじめ目の前に置いておくのか、ボールを置いておく場合は全部置いておくのか、一つずつ置いていくのか、並べてあるのか…これだけでも色々なパターンが考えられます。
また、プットイン課題に取り組む場合は、利き手に対してボールをどの位置に置くのか(正中線を超える動作は難易度が高くなります)という点も、意識しておくと良いと思います。
一回の課題で何個くらいのボールを入れることができるのか、箱の位置が変わっても手を伸ばすのか…等、シンプルなプットイン課題でも、同じ教材を使って様々な変化をつけることができます。

この③のような発想ができるようになると、他の教材でも、同じ教材をどんどん広げて活用できるようになっていきます。

上記のような視点で教材を広げていくと、子どもが難しさを感じるようなことがあるかもしれません。その「なぜ難しくなった?」を考えることが、子どもの理解を深めることにつながっていきます。

正中線を超える動作は難しい、見える範囲がこのくらい、音があれば注意を持続させることができる…ちょっとした変化だからこそ、その課題がより見えてくるようになります。

まとめ

今日は「教材を横に広げる」ということについて考えていきました。

特性の強い子の場合「できない」ことにとても敏感で、課題の急なレベルアップにパニックになったり拒否をしたりすることもあります。
大きな変化ではなく、教材を横に広げる視点で小さな変化をたくさん作って、少しずつできることを増やしていくことが、結果的に次の段階の成長にもつながっていくと思います。

「教材を横に広げる」視点は、これからも大切にしていきたいと思います。

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