「1対1対応課題」について考えよう

◎1対1対応課題って…??

1対1対応課題とは、どのような課題でしょうか。
簡単に言うと「一つのところに一つの物を入れる(対応させる)」という課題です。
シンプルな課題ですが、実は数の学習の基礎にもつながる大切な課題になります。
どんな目的があって、どうしてこの課題が必要となるのでしょうか。
具体的に考えていきたいと思います。

◎課題のねらい

大きくわけて、以下の二つのねらいがあると考えています。

①目と手の協応
 …入っていないところを見つけ、そこに向かって手を伸ばして入れる力が必要になります。
②1対1対応の課題の理解
 …「一つのところに一つのものを入れる」という課題の理解ができているかの確認になります。

それぞれについて、もう少し詳しく考えていきます。

①目と手の協応

 目と手の協応とは、「目で確認したところに、意図的に手を動かす力」です。
子供が課題に取り組んでいる時、子供の手元ではなく子供の視線に注目すると、
”入れ物に物は入っているけど、その時視線は課題に向いていない”ことがよくあります。

「視線は上の空、でも手をなんとなく動かしていたら入って課題ができた。」
手元だけに注目していると、課題ができたことになりそうですが、
これでは本当の意味で課題ができたとは言えません。

写真①は、紙コップにゴルフボールを入れる1対1対応課題です。
この課題を提示したときに、
”真ん中の紙コップにはボールを入れられるけど、端には入れようとしない”、
”左側には入れるけど、右側には入れようとしない”(逆もあり)
といった様子が見られることがあります。

この場合は、一度に見える範囲が狭かったり、見える部分が片側に寄っていたりすることがあります。
紙コップの幅を変えたり、提示する位置や向きを変えたりして、
本人が見えている範囲を確認しながら取り組むことが必要になります。

写真②のように土台の数や位置を変更できる課題を用いれば、
どの位置が見えやすいのか、見えにくいのかを確認することができます。

「見る」ことを促す初期の段階では、入れ物に入ったところと入っていないところが
はっきりとしていること
が大切になります。

写真③

写真③のように、入れ物(紙コップ)に対して入れる物(デコレーションボール)が小さいと、
一つの紙コップにデコレーションボールを何個も入れてしまう可能性があります。
それを防ぐためにも、課題の初期には、
入れ物に対して一つしか入らない大きさのもので取り組む方が良いと思います。

同じところに入れようとしたけど入らなかった。あれ?じゃあどこにいれたらいいのかな。
この気付きが、見ることを促すことにもつながります。
「見ること」「入れること」に取り組むことで目と手の協応の力が高まっていきます。

②1対1対応課題の理解

1対1対応課題の理解とは
「一つのところに一つのものを入れる」ということを理解しているかということです。

先ほど見た写真①と写真③を比較して考えてみます。

写真①と写真③は、どちらも入れ物は同じ紙コップでできています。
違うのは入れるものです。
①はゴルフボール、③はデコレーションボールです。

この二つの大きな違いは、入れ物(紙コップ)に対する入れるもの大きさの違いです。
写真①は紙コップと同じくらいの大きさの物(ゴルフボール)を入れるため、
一つのボールを紙コップに入れると、次のボールをさらに入れることができません。

一方、写真③は、紙コップに対してデコレーションボールの大きさには余裕があり、
一つ入れたところにも、二つ目、三つ目のデコレーションボールを入れることができます。
そのため 「一つのところに一つのものを入れる」 という課題の意図が理解できていないと
同じ紙コップに数個の物を入れてしまう可能性が出てきます。

このような時には、入れ物や入れる物の大きさ、提示方法等を工夫しながら
少しずつ段階を調整していくことが大切になります。

Instagramでは、色々な種類の1対1対応課題を紹介しています。
入れるタイプの課題だけでなく、一つのところに一つの物を対応させるというタイプの課題もあります。

一種類の課題を訓練的に行うのではなく、
色々な種類の1対1対応課題に取り組むことで、
「一つのところに一つのものを入れる (対応させる) という課題の理解が進んでいくのではないかと考えています。

◎1対1対応課題はなぜ必要?

1対1対応課題ができるようになると、日常生活での”役割”にもつながっていきます。
例えば「机の上におぼんを1枚ずつ配る」「おぼんの上に食器や牛乳を配る」「お皿にお菓子を一つずつ配る」等です。
課題でできるようになった力が日常生活で使えるというのは、とても大切なことです。
課題が課題で終わることなく、日常生活で活用させやすい課題といえます。

また、一つのところに一つの物を入れるという力は、数の学習の基礎となります。
数の学習の導入期には、実際に具体物を操作しながら数を数えていくことが大切になります。

写真④は、数の学習の導入時に使用する教材です。
用意されたクリアケースに物を入れながら数を数えていくことで、数の理解を促していきます。
これは1対1対応課題の「入れ物」に対して「入れる物」を対応させることが、わかっているからできる課題です。
1対1対応課題ができたからすぐに数がわかる!というわけでないですが、
数の理解の基礎として、1対1対応課題ができることが大切であるといえます。

このように数の学習につながっていくことを考えると
始めはなんとなく目に入ったところから入れていたボール等を、
徐々に「左から順番に入れる」ように誘導していくこと
1対1対応課題に取り組むときに意識していると良いと思います。

◎まとめ

1対1対応課題とは、 「一つのところに一つの物を入れる(対応させる)」というシンプルな課題ですが、「目と手の協応」の力を高めていくとともに、数の学習の基礎となる大切な課題です。
また、日常生活で活用しやすい課題でもあるので、目標やねらいを意識しながら色々な形で提供していくと良いと思います。

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